「何かをやっていて暇ではないのに、なんとなく退屈だ。」
人生において、「暇」と「退屈」に向き合う時間は途方もなく多いです。
テクノロジーが進化したり、自粛要請でリモートになりおうち時間が増えたりと、暇で退屈な時間は増えてきていることでしょう。
その中でも冒頭に示したように、
「暇」ではないのになんとなく「退屈」なんだよなあ、そんな時間もあるかと思います。
では、私たちはそんな人生の大半を占める「暇」と「退屈」に、どのように対処して幸せな人生を送ればいいのか?そもそも、「暇」「退屈」とは何なのか?
その人間の人生にとって最も重要な問いに向き合い、生きるヒントを与えてくれる本です。
本記事は本書の原理となる部分の要約(非常に読み応えのある本なので結論はあえて示しません)を中心に進めます。
本の概要
タイトル:暇と退屈の倫理学 増補新版
著者:國分 功一郎
出版社:太田出版
出版年月:2015年3月
ページ数:437
読了目安:10-15時間
暇を埋めて、退屈しないように生きるってめちゃくちゃ難しいことだと思います。
何をしていても必ず「ああ、退屈だ」と感じてしまう時はやってきますよね。
しかし、本書は断じて啓蒙書のような「人生を充実させるための手段」を提供するものではなく、
あくまで「哲学書」として「退屈」というものを理解し、それに立ち向かうヒントを与えてくれる本です。
歴史に名を残す哲学者の主張をべースに批判・補強・展開をしながら、経済学・人類学・歴史学という幅広い目線から「退屈」を論じます。
論理展開が非常に明快かつ痛烈で、一貫した展開が気持ち良いです。
「退屈」という状態を客観視し、それを充実させるためにどうすべきなのか。
読了後にはこの視点が得られているはずです。
「暇と退屈」の原理
ここからの文章は本書の第一章『暇と退屈の原理論』を参考にしています。
それゆえ、本書の結論には届かない内容(理解する上では最も重要な内容ですが)となっています。あくまで「暇と退屈の原理」です。
さて、17世紀フランスの哲学者、パスカルの論考から本書はスタートします。
人間は部屋にじっとしていることができない。
何もやることがない。これが「退屈」という状態だ。
それに大抵の人間は我慢ならない。何かをしに飛び出していく。
一見素晴らしいことのように見えるこの行動が、人間を不幸にしている唯一のことだ。
パスカルはさらにこう続けます。
人間はその退屈に耐えられず、「気晴らし」を求める。
そして人間は、その追い求めるものの中に本当に幸福があると思い込んでいる。
つまり、退屈とは、何かを追い求めて満たされるものであると人間は錯覚している。
これはどういうことでしょうか?
本書でも登場する狩りの例で説明します。
退屈から逃れるためにじっとしていられず、ウサギ狩りに熱中している人がいます。
その人に「はい、ウサギ」と言ってウサギを渡せば、その人は嫌な顔をするでしょう。
でもなぜでしょうか?
その人はウサギを追い求めているから、結果的にウサギを得られればいいのでは??
違うんです。
実際にはその人は、ウサギを欲しいからウサギ狩りをするのではないんです。
私たちが何かに熱中する際、私たちは「欲望の対象」と「欲望の原因」を混同しているのです。
つまり、その人が本当に欲しいのは「ウサギ」ではなく、「退屈から逃れるための気を紛らわせる気晴らし」なのです。
自分を騙して気晴らしをし、退屈から逃れようとしている。そう言えるでしょう。
しかも、人間はその気晴らしに「熱中」と「苦しさ」を求めます。
なぜなら、多少苦しくても熱中できることをしないと、「退屈でいることの苦しみ」の方が勝ってしまい、さらに苦しむことになってしまうからです。
狩りの例だと、ウサギを狩るため(気晴らしのため)に猟銃を担いで汗びっしょりで山を登り泥だらけになることは、退屈でいるよりよっぽどマシな「苦しさ」だということになります。
まとめると、このように言えます。
人間は部屋でじっとしていられない。だから熱中できる気晴らしを求める。熱中するためであれば、人は苦しむことすら厭わない。いや、積極的に苦しみを求めることすらある。
さて、果たしてこの人間の状態は本当に「幸せ」と言えるでしょうか?
本質的に「退屈」から逃れられていると言えるでしょうか?
確かに、一時は退屈から避けられるかもしれない。
でも気晴らしが終わればまた退屈に戻り、苦しむことになります。
「退屈」という魔物に弄ばれているような、「退屈奴隷」のような印象を受けてしまいます。
これが、本書における最初の出発点です。
ここからさらに詳しく論じられますが、
・「退屈」とは何なのか?
・なぜ人間は「気晴らし」を求めるのか?
・「退屈」を避け、本当に「楽しむ」にはどうしたらいいのか?
このような、私たちの最終的な「幸せ」についての論考が約400ページにわたり続けられます。
正直、かなり読み応えがあります。
しかし論理は明快でかつわかりやすい例も随所にあり、最終的な結論に至るまでの一つ一つの要素を「楽しんで」読み進められます。
最後の結論は至ってシンプル。
退屈な人生を避けるエッセンスを入手することができますよ。
さいごに
こういう哲学書の紹介記事って思ったよりムズいですね。
論理的な思考力・ライティング力が問われます。。笑
この本は人生のバイブルとも言えるほどの論理性と結論のシンプルさを持っています。
結論のシンプルさとは、自分で応用して行動に移すのものなので良いことだと自分は感じています。
上述しましたが、本書は結論として「この時はこうすべきだ」という方法論を提示するものではありません。
また、一冊を通して論理的な展開をしていくので、結論だけ読んでも説得力は感じられず意味もわからないと思います。
読み応えのある本ですので、覚悟を持って、楽しんで読んでみてください。
得られるものは絶対にありますよ!!
ではまた!!
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