日本語ラップ界の重鎮、漢、MEGA-G、LIBRO。
20年以上活動を続けてきている3人の「ラッパーであるための曲」、『マイクロフォンコントローラー』をガチ解説します。
歌詞、MV、サンプリング元紹介、曲の紹介で進めていきます。
マイクロフォンコントローラー|歌詞
マイクロフォンコントローラー|MV
2014年リリース、LIBRO、MEGA-G、漢の共同作業で生まれたクラシック。
漢さんの音源の中では個人的に一番好きなので紹介させてもらいます。笑
マイクロフォンコントローラー|サンプリング元
トラックのサンプリング元はThe Cranberriesの『You and Me』。
原曲のしなやかで穏やかな音そのままに、心地よいドラムとハイハットの音を入れたLIBROさんの優勝ですね。このトラック、一日中聴いてても飽きる気がしません。
マイクロフォンコントローラー|曲の解説
LIBROがのちのインタビュー記事で「この曲の歌詞には、ラップをする上で乗り越えなければいけないハードルが全て書かれている」と語ったように、漢とMEGA-GとLIBROの「ラッパー哲学」がこれでもかと滲み出た一曲となっています。
さて、この『マイクロフォンコントローラー』でもちろん何よりエグいのはリリックです。
「時代のせいじゃなくて自分のせいじゃね?
綺麗事を並べる自虐ラップはダルい
いつでもライブを見れば一目瞭然」
「言葉が武器なくせに無責任な
MCの出すCDは売れないこのご時世
待つだけ待ったって 無駄なやつは削減
唯一の条件は『マジな奴だけ』」(漢 a.k.a. GAMI)
昨今の日本語hiphopシーンに存在する口だけアーティスト、中途半端なならず者たちを一蹴するこのリリック。唯一の条件はマジな奴だけ。そうじゃない奴は出て行った方が良い。
ここでキツく突き放したようにも見えます。しかし。
「音符も読めないし楽器もできない
ブログなんてしなくたってプロでいられるぜ
知識溜め込むよりも 自力オリジナルだ」
これです。名リリック。
音符も読めなければ楽器もできない奴でも、『マジ』ならプロでいられる。
若者への優しい励ましに感じるのは僕だけでしょうか。
漢さんの声は迫力があるはずなのに、どこか優しいトーンを纏っていて、粘りこくないのに心に入ってくる、不思議な感覚がありますよね。。
そして、HOOKのMEGA-Gさん。
「時にはステージ 時にはレコーディングブース
時にはサイファー 降臨する
イルなライム 売り捌くボーリング
通も唸るようなキャリアを更新中」(MEGA-G:HOOK)
これは文字では伝わらないので一回聴いてみてください。
2021年には無いフロウ。こんなお洒落な発音の仕方はMEGA-Gさんにしかできません。
で、何より、「通も唸るようなキャリアを更新中」ってヤバくないですか?
その前後の押韻の流れも素晴らしいのですが、この人たちが通なはずなのに、どこを見据えているのか、それは気になります。
「確かにイメージとは少し異なったし
描いたビジョンがズレたり喧嘩することもあった
だがまだ死んでない 進歩する進行形
MEGA-Gと俺とLIBROで高める信憑性」(漢 a.k.a. GAMI)
いやああああ、美しい。
「シン」で踏み連ねていく美しい頭韻。
人としてのラッパーの苦悩、でも死なないと歌う力強さ。
活動を続けることで高まる信憑性、それを仲間と作っていく。
この4行でここまでメッセージを伝えられますか?
僕は、無理です。
説明するのも野暮ったいですね。。。
「ありのままを見失わないように
嘘や思い込み縋らないように
つまり自分見失わないように
悠々と音の上で今日も波乗り
目的見失わないように
待ってるだけじゃ埋まらない距離
ポリシー、本心詰め込んだ内容に
漢、MEGA-Gと絶妙なやりとり」(LIBRO)
自分を失わないことがMCとして最も大事なことだ。自分を見失わないことが、ラッパーとして一番難しいことだ。とLIBROさん。
LIBROさんはラップが滑らかすぎるゆえ、リリックの意味をリスナーがただでは感じられないといった現象も起こりうると思います。
しかししっかり聴くともちろんですが唯一無二のメッセージ性が。
しかもこの曲では16小節をまるまる使ってこの「自分を見失わないこと」を説いているのです。
そして最後には「漢、MEGA-Gと絶妙なやりとり」と。
漢の最後のバースに呼応するように、美しいシーケンスでこの曲が締められます。
本当に美しいですね、この曲は。
さいごに
個人的には漢さんの曲で一番好きな『マイクロフォンコントローラー』を解説しました。
イカガダッタデショウカ。
3人の『ラッパー』であるための哲学が滲み出た本物の名曲です。
是非聴いてみてくださいね!
コメント