1. Home
  2. /
  3. 書評
  4. /
  5. 【読書の宴】アフターデジタル2-誤解だらけのDX・UX、ちょっと待った!

【読書の宴】アフターデジタル2-誤解だらけのDX・UX、ちょっと待った!

書評
スポンサーリンク

「誤解だらけのDX・UX、ちょっと待った!」

どうも。HKです。

今回は、『アフターデジタル(2019)』の続編、

アフターデジタル2』の紹介記事です!

「DXやUXの幻想・勘違いとは?」

「日本企業はどうやってUXを向上させていけばいいの?」

こんな疑問に答えてくれる本です。

ではいきましょう。

前書『アフターデジタル』の紹介・書評はこちらから。

本の概要

タイトル:アフターデジタル2-UXと自由

著者:藤井保文

出版社:日経BP

出版年月:2020年7月

ページ数:238

読了目安:4-5時間

////////////////////////// // // //////////////////////////

『アフターデジタル』とは?(前著の要約)

アフターデジタルとは、オンラインとオフラインの境目がなくなった世界です。

現に中国はその世界に近づいています。

今まではリアルにデジタルが少しくっついている(例:ユニクロのリアル店舗とオンライン店舗)ような世界でしたが(=ビフォーデジタル世界)、

現在はデジタル世界の中にリアル世界が内包されており、常にオンラインの状態にある(スマホやIoTを通じて行動データが取られている)世界(=アフターデジタル世界)に近づきつつあります。

常にオンラインとつながることにより、企業は顧客(私たち)の行動データを入手し、

それを商品提供に活かしていきます。

それにより企業は、最適なタイミングに、最適なモノを、最適な方法で提供できるようになります。

このようなアフターデジタルの世界では、従来のような製品販売型のビジネス(自動車の店舗販売ビジネスなど)は衰退します。

逆に、体験提供型のビジネス(音楽サブスクなど)が展開していきます。

体験提供型ビジネスは、契約更新時やアプリ立ち上げ時など高頻度で顧客と接点を持てる結果、行動データを大量に取ることができ、より最適なサービスを提供し続けることができるのです(音楽レコメンドなど)。

逆に商品販売型ビジネスは、商品販売時の一回しか顧客と接点を持てず行動データを取れないので、

体験提供型ビジネスに比べ、競争力で劣っていきます。

経験提供型ビジネスで大事なのは、「顧客体験×行動データのループ」です。

取った行動データを、より便利に、より見やすく、より楽しいサービスにするために活用し、

より顧客が使ってくれるようなサービスの提供を目指します。

より多くの顧客、また1人の顧客がより多く使ってくれた結果、また新たな行動データが取れ、

さらにより良いサービス(顧客体験)提供に役立てていきます。

この「顧客体験×行動データのループ」がこれからの時代は何より大切です。

行動データをより高頻度で獲得できるペイメントサービス(LINE PAYやPAYPAY)が、顧客体験を最も良い品質で提供できる業態で、次に顧客との接点をを持ちやすいサービサー(飲食やモビリティ)がきます。そして顧客体験の品質で最も優位性が低いのが、最も行動データを取りにくい、製品を作る現場のメーカーです。

ここまでが前著『アフターデジタル』の要約になります。

ここからが『アフターデジタル2』の本題です。

誤解だらけのアフターデジタル

しかし!!!

このアフターデジタルには、ある誤解がつきものだといいます。

それは、『データをとにかく取ればいい!勝ち!』という誤解です。

その誤解の根源は、データ取得者に『顧客体験を良くしよう、という意思がないということ。

例えば、

オンライン決済サービスでシェアを獲得し、大量の行動データを首尾よく入手できたとします。

しかし、保持しているそのデータ自体には価値はありません。

そのデータをソリューション化して活用できなければ、持っていても意味が無いのです。

逆にデータの漏洩リスクと管理費用がかかるばかりです。

ある人がコンビニで決済することが多いと分かれば、そのコンビニのクーポンをメールで送るなどのマーケティングに活用する、

消費行動から支払い能力を確認できれば、その顧客の「信用度」を金融サービスに活用し、与信管理の効率を上げる。

このような、あくまで顧客のためのデータとして顧客の不満やストレスを解消すること、つまり上記の「顧客体験×行動データのループにデータは活用させるべきです。

以下で、行動データの本当の活用方法を紹介します。

行動データの本当の活用とは?

ユーザー側の体験向上

ユーザーへの最適な提供は、何が欲しいかを把握し、それの広告を打ち、購入させる『商品提供』だけではありません。

本当に大事なのは、より高い利便性の提供や新たな選択肢の提供と言った『価値提供』です。

例えば中国の平安保険

スマホでがん保険の資料を見た、という行動データをもとに、お客さんが欲しそうながん保険商品の営業をかけに行くだけの『商品提供』だけではありません。

もし自然災害が起こり、その地域のあるお客様が災害に対し請求できる保険に入っていたと判明した場合、「もし災害で損失があれば保険が効きますよ」というリマインドコールをするといった『価値提供』もしています。

ビジネスプロセス側の効率向上

デジタルで行動を可視化してサボりなどの非生産的な行動を抑制し、より良い顧客体験につなげる方法です。

例えば、タクシー配車アプリのディディ

アプリのGPS経由で、急発進・急ブレーキの少なさや配車リクエストへのレスポンスの速さなどを可視化し、ドライバーのスコア付けに活用します。

このスコアは加点方式で、貯まれば貯まるほどランクアップし、給料も上がるという仕組みになっています。

この仕組みによりタクシーサービスの質が上がり、結果的に顧客体験の向上につながるのです。

このようにして顧客体験のための行動データは、ビジネスをする側の業務管理にも活用できます。

日本企業はどうするべきか?

上記のような顧客体験の向上を進めていく中で、

日本企業にはどのような難しさがあるのでしょうか。

どうすれば会社全体に話を通りやすくし、意識改革できるのか?

DXや顧客体験の必要性とその認識を揃える

経営陣がやりたいことを上から命令し、下が言われたままに行動する命令型組織ではDXはできません。

顧客に提供したい体験の世界観を、命令だけでうまく伝達しきることが困難だからです。

全社で提供したい体験の世界観を共有するためには、「この事業では、この世界観はこのように解釈するべきでは無いのか」「この方針は、世界観と矛盾していないか」などの現場からの声がある対話型組織が必要になります。

実際にgoogleでは毎週木曜の夜に、従業員が経営陣にどんな挑戦的な質問でもできるというイベントが開催されているようです。

現場レベルと経営陣レベルの対話がうまくできる企業だと、

顧客に提供するサービスの世界観が全社で共有されて意識改革も捗り、

DXを効率よく進めて顧客体験をより良くできる可能性が高まります。

まずは経験する

日本の企業はDXが遅れているとよく言われます。

これはトップダウンでリスクをよく勘案されて新しいことを始めるから、というのが大きな要因となっています。大きな企業にこの傾向はよく見られます。

しかしこれでは、アジャイルで素早くサービスローンチできる中国企業にもちろん食われてしまいます。

そのためにも日本企業は、失敗を恐れずまずは経験してより具体的な方法を学びながら全社を巻き込んでいくことが重要です。

前述のように経営陣と現場レベルの世界観を擦り合わせた後は、なるべく早くにサービスを開始した方が良いでしょう。

そこで得た小さな成功を経営陣が引き立て、全社を巻き込むムーブメントにしてしまうのが1番手っ取り早い方法です。

例えばAmazonは、数々のヒット商品に隠れて、それよりもずっと多くの失敗を重ねてきています。

ABテスト的に市場に出し、良い方を具体例としてさらに磨きをかけていく、という手法をよく採っているのです。

その流れの中で、商品の成功を経営陣が確認し、全ての社員がその商品のさらなる成功にフォーカスできるよう引き立てています。

このように新しいサービスを始める際にはなるべく早く開始し、その中の小さな成功を具体例として経営陣が引き立て、さらにブラッシュアップしていのが日本企業も実践できる一つの方法です。

書評まとめ

前著「アフターデジタル」に引き続き、いかに顧客視点で有益な経験を提供できるかという点に非常にフォーカスした一冊でした。

特に本書ではその具体的な方法論が書かれており、より実践的な内容となっていました。

私は現在、社員数30人ほどのベンチャー企業で長期インターンをしていますが、もちろん、DXもUXの向上も、進めている最中です。

その経験と本書の内容から、DX・UXにおいて1番難しいのはやはり組織内部の問題なのではないか、と感じるようになりました(本書p.216〜記載)。

私の会社では、経営陣も現場レベルの社員も一緒に5人ほどのグループに分かれて、毎日昼礼と夕礼の後に15分ほどの雑談タイムを設けています。

その中で顧客体験に関しての新たなサービスのアイデアが生まれるのはもちろん、経営陣の意向を社員とシェアすることによって全社を巻き込んでDX推進とUX向上を、速いスピードでブレなくしやすい環境を整えています。

しかしこれは、ベンチャーならではの芸当だと思うのです。

社会をひっくり返すほどの影響力を持ったDXが可能な大企業は、この『上と下が一体となったDXと顧客体験の向上』という組織問題が1番重要なのかと思います。

上司との世界観の擦り合わせは容易ではありませんし、トップダウンの命令ですらうまく伝わらない可能性もあると思います、特に日本の大企業は。

本書でも、「組織戦略で最も大事なのはそれを実行する社員である」とあるように、対話型の組織が非常に重要視されています。

それゆえ、顧客体験の向上を目指す企業はまず最初に組織体制を見直す、ということが最重要事項なのではないでしょうか。

基礎なくして応用なしだと思います。

以上、ヘタレ大学生からの意見でした。

さいごに

最後まで読んでいただきありがとうございました!!!

アフターデジタル2』は現代の日本企業、またビジネスパーソンに必要な示唆が詰まっている名著だと思います。

これからの時代を生き抜くすべての人に読んでいただきたいです!!!!!

ではまた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました