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「自分」を作るのは「自分」だけ-『サルトル 実存主義とは何か』【読書の宴】

書評
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人間は後になって初めて人間になるのであり、

 人間は自らがつくったところのものになるのである。

サルトルは実存主義を唱え、「人間とは人間そのものがつくっていくものだ」と主張しました。

本書はそんなサルトルの基礎的な思想や論理を紹介するもので、

哲学をかじってみたい!少し深く哲学を体感したい!という人におすすめの内容となっています。

本記事ではサルトルの第一の主張、『本質は実存に先立つ』という考え方を紹介し、

最後に僕が感じたことを書評として残そうと思います。

本の概要

タイトル:サルトル 実存主義とは何か

著者:海老坂 武

出版社:NHK出版

出版年月:2020年3月

ページ数:174

読了目安:4-5時間

本書は「実存主義入門」もしくは「サルトル入門」と呼ぶにふさわしい良書。

サルトルは19世紀フランスの哲学者/小説家です。

冒頭でも紹介したように彼は『実存主義』を唱え、人間とは自らがその存在をつくっていくのもであると主張しました。

この思想は世界に希望を求める世界中の多くの人に波及し、フランスの若い学生を始め、もちろん日本でも多くの人が知ることとなりました。

彼は優れた小説家として『嘔吐』『存在と無』などの名著を残し、その思想の核となっているのが「実存主義」という考え方です。

本書は彼の提唱する実存主義を、「実存主義とは何か」を入り口に、その思想の原点の小説『嘔吐』の紹介を中心として紹介していきます。

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『本質は実存に先立つ』とは??

簡潔にいうと、人間は自分で自分を形作っていくことができる、という考え方です。

少し例を出して説明します。

例えばペーパーナイフは、生産された瞬間から「紙を切るもの」という「本質」を持っています。ペーパーナイフ職人は、ペーパーナイフの「紙を切る」という役割を知っていて、ペーパーナイフの実物=「実存」を作る。

この場合は、「本質が実存に先立って」います。

これはペーパーナイフに限らず、家でも、iPhoneでも、机でも一緒です。

一方、人間の場合、「その人がどうあるか、どんな人なのか」という「本質」は、生まれた時に決定していません。

まずこの世に生まれて=「実存」してから、就職活動をして企業人となったり、起業したり、スポーツ選手になったりして、自分が「なにもの」であるかの「本質」を決めていくのです。

人間の場合だけは、「実存が本質に先立って」います。

つまり、人間は「自分が自分を作れる」という自由を手にしていると言えます。

気ままに旅をするもよし。

しかし。

現実は厳しく、この世界の全ては「人によって作られたもの」です。

今あなたがみているスマートフォンも、座っているソファも誰かがつくったものです。

もっと言えば、世界での自分(あなた)でさえ他の人が作るものです。

いくらあなたが「俺はすごい作家なんだ」と思っていても、他の人がそう認識しなければあなたは「すごい作家」ではないのです。

では、そんな「自分でさえも他有化」された世界で私たちはどう生きていけばいいのでしょうか?

私たちはどう自分をつくっていけばいいのか?

*以下は本書を読んだ個人的な考えです。本書の内容を参考にしています。

先ほど述べたように、全てを決定された社会(他者に作られた社会)では、私たちは自分の存在さえも他人に決められてしまっており、自分で自分を決められる状態=自由な状態とは程遠くなっています。

では、どう自分をつくっていけばいいのか、という問いは「どうやって自由を見つけて、その中で自分を見つけていくのか?」と言い換えることができると思います。

この問いに答えるには、サルトルが本書でも述べているように

「他人の目を受け入れる」のではなく、

他人の目を積極的に引き受ける事」が重要です。

この二つの違いはこうです。

他人の目を受け入れる」とは、他有化された自分に絶望し、無気力になる事。

他人の目を積極的に引き受ける」とは、その社会(他有化された社会)で生きていくしかないと腹をくくる事。無気力になるのではなく、逆転の発想で「意識」に自由を持つ事。

いわば「負けるが勝ち」のような逆転のメンタリティで社会を受け入れ、逆に世界に希望を持つ事です。

この意識を持ち「意識の自由」を手に入れれば、積極的に行動することができます。

自分の中の欲求に答え、行動に移していくのです。

そしてその行動から、新たな自由未来が生まれるのです。

本書のサルトルの言葉を引用します。

未来というのは目的であり、希望であって、行動である。

 行動は失敗するかもしれないし、むしろ挫折することの方が多い。

 しかし、挫折の中にはほとんど見分けのつかない成功が含まれている。

 希望がすっかり失われるわけではない。

 進歩というのはそういう形でしか実現しないのだ。

どんな世界の中にも未来、希望を見つけるサルトルの楽観的とも言える名言です。

つまり大事なのは、未来に希望をもち、自分が自分を作るんだという意思で自分を行動に投げ出すこと。

この考えは、人生のスローガンとして参考にできるものだと僕は考えています。

さいごに

本記事ではサルトルの「実存は本質に先立つ」という主張を軽く紹介し、

サルトルの思想をもとにして感想を述べてみました。

本書は非常に示唆に富み、誰にとっても生きる希望を与えてくれる内容でした。

哲学をかじってみたい人にとってもちょうど良いレベルで、説明・解説も丁寧。

入門書として最適です。

コロナ禍で生きる希望が薄れかけている大学生や

忙しすぎて鬱気味な社会人の皆さん、

「他有化を引き入れる」逆転の発想で、希望を見つけてみませんか?

ではまた!!

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