「日本語ヒップホップといえば、チル・エモラップ」。
そんな認識も広まってきた昨今のシーンですが、
今回はチル・エモラップの始祖とも言えるS.L.A.C.K(現5lack)さんのHot Cakeという曲を紹介します。
ほんわかしたトラックと5lackさんのリリックがとにかく心を揺さぶる超名曲です。
歌詞解説中心の記事になっています!
ではいきましょう!
5lack(S.L.A.C.K.)(スラック)とは?
1987年生まれの日本人ヒップホップMC・ラッパー。
実の兄にPUNPEEを持ち、日本最強のhiphop兄弟として知られている。
もともとS.L.A.C.K名義で活動しており、PUNPEE、GAPPERとともにPSGというユニットで活躍していた。2012年ごろから『5lack』として活動。
兄弟で作った最高傑作がこちら(『Wonder Wall / PUNPEE feat. 5lack』)
今までで計9枚ものフルアルバムをリリースしている、生きる伝説の5lack氏。
そして2009年にリリースし、今でも名作として根強い人気を誇るのが今回紹介する『Hot Cake』。
2009年発売のフルアルバム『My Space』に収録されています。
今大人気の日本語エモ・チルラップはここから始まったといっても過言ではありません。
歌詞
PV・購入リンク
現在この曲は大手ストリーミングサービス(apple musicやamazon music)では聴けません。
youtubeもしくはサウンドクラウドで聴くか、アルバム購入しiTunesダウンロードしましょう。
以下リンクです。
・youtube
・収録アルバム『My Space』購入リンク
曲の解説
この曲のサンプリング元は1973年リリース、The spinnersの『Could It Be I’m Falling Love』。
ロマンティックな音色で有名になった名曲。
さて『Hot Cake』も、原曲と同じようにゆったりで心地よいメロディに優しいドラムの音が合わさり、知らず知らずのうちに首が振れているなんともメロウな曲。
ここに5lackさんのやんわりとした、抜け感溢れるリリックが乗せられます。
「あの日coolに穿き込んだdenim pantsは
もう部屋には見当たらないな
あの日coolに履き込んだTimberland bootsも
部屋には見当たらないな
…
あの日coolだったMC達は
今じゃどのclubでも見当たらないな」
あの日はcoolだったあのラッパーも、俺の服みたいにどっかに消えてしまった。
と、「俺はいつまでもラッパーでいるぞ」と宣言しているかのような5lackさん。
強い意思も見えるこの歌詞ですが、「服を無くしてしまう適当な人間」、そんなやんわりとしたニュアンスも感じられますね。同時に色々なメッセージを伝える、本当凄いですよねこれ。
「なんて適当にさ 話してる夕方が透き通ってさ
なんて適当にさ 話してる奴が大好きでさ
なんて適当にさ 適当って言葉が大好きでさ」
他愛もない、適当な話がしたい。適当って言葉が大好き。
完璧に5lackさんの人柄を表したこのラインが、僕は大好きです。
曲の雰囲気と5lackさんの声質、リリックが全て一緒になってリスナーに「適当」の洗礼をしているかのよう。
これを聴いたら、「あ、なんで俺肩肘張って生きてんだろう。もうちょい気楽に行こうや!」なんて思えてしまうんです。
「俺のいいとことお前のいいとこを
足して2で割りゃ最高 最高だと思うよ」
別に俺が最高じゃなくたって、誰かと力を合わせればそれで最高じゃんか。
本当に元気付けられるし、5lackさん一生ついていきます。って感じです。
んで、このラインは10年越しにリスナーのもとに帰ってきます。
先述した2020年リリースの『Wonder Wall / PUNPEE feat. 5lack』でPUNPEEさんにこう言及されているのです。
別に2で割る必要もないよ。お前はお前でいいんだよ。
もうこの兄弟、最高すぎますね。
「Who are you? 5秒前の自分にバイバイでさ
別にそんな それだけできればいいと思うけど」
最後はこのリリックで。
何があったって切り替えればそれで十分だよ。
あくまで適当に、でもリスナーを確実に元気付ける5lackさん、大好きです。
曲を通して、「〜〜だな」「〜〜かな」「きっと」「〜〜と思うよ」「〜〜でさ」みたいな言い回しを多用することで5lackさん特有の適当さ、ふんわりした感じを醸し出しているのだと思います。
決してトラックの良さや声質に頼るのではなく、しっかりと歌詞でも一貫した雰囲気を醸し出す。
スキルが尋常じゃないですね…
さいごに
一度聴けば頭から離れない、10年前の名曲を紹介しました。
日本語ラップのチルさ・エモさみたいなものはトラックや勢いだけでは誤魔化しきれないな、ということを切実に教えてくれる曲です。
現在はyoutubeとサウンドクラウドでしか聴けないこの曲。
アルバムは絶盤にはなっていますが、amazonとyahoo!shoppingで売っているので是非買ってみてください。
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