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「経験」から生み出す哲学・万物への問い-『現代現象学』

書評
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現象学」という言葉すら、聞いたことのある人は少ないかもしれません。

フッサールやヘーゲルなどの哲学者が広めた「現象学」を、現代により良い形で蘇らせようとしたのが本書です。

本記事は、本の概要・要約「現象学」とは?という一般説明から、最後に書評を述べる形にします。

本の概要・要約

タイトル:現代現象学

著者:植村玄輝・八重樫徹・吉川孝編著、富山豊・森功次著

出版社:新曜社

出版年月:2017年8月

ページ数:314

読了目安:10-20時間

「現象学」とは何か、という問いには、実は明確に答えることができない。

フッサールによる現象学の創始以来、さまざまな形で拡張し続けたため、さまざまな学問の観点が取り込まれているからです。

そのような状況で、本書は「哲学としての現象学」を現代に蘇らせ、広い意味での哲学への入門書となって欲しい、と意図されて書かれました。

現象学や哲学の知識がまだ浅い方は第一部の入門編(基礎編)から、そうでない方は第二部の応用編から読み進めるといいかもしれません。

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本書での「現象学」とは?

本書で扱うところの「現象学」とは、「私たちの経験の探求」です。

私たちと世界の対象との関係は「経験」と現象学では呼ばれます。

本書ではその経験の分類を通して、さまざまな哲学の問いを検討することを目的としています。

経験の分類の起点となるのは、私たちにとって最も身近である「知覚」という経験です。

その他に「想像」「意識」「他者認知」「感情」「行為」といった経験の分類から、哲学の議論へと進めていきます。

さて、そんな現象学で最も重要なトピックである「経験」ですが、いくつかの特徴があります。

まず初めに、経験は「志向性」を持つということ。

これは、経験とは「何かについて」のものである、ということです。

例えば、私たちが朝起きて、歯を磨いて、朝食を食べて、靴を履いて玄関をくぐる、といった一連の経験。

この経験群にはそれぞれ、朝起きねば遅刻するという「大学の授業」への意識、歯を磨く際の「歯磨き」というものを持つ知覚など、経験の中には「何かについて」という「志向性」が内包されているのです。

また、経験は「一人称性」を持ちます。

これは、経験とは全て「わたしにとって」のものであるということです。

上記の例でも、全ての経験は常に「わたし」を起点としており、「わたしにとって」という観点から獲得されています。

ほんの一例ですが「経験」には、このような一般的特徴があります。

本書でもこの特徴は重要です。

このように、本書で扱う「現象学」は、私たちの細かな経験一つ一つにまでフォーカスし、その分類論証し、結果的に哲学の問い(例えば「人生とは?」というような)にまで広げます。

書評

上記文章で感じた方もいるかもしれませんが、現象学(本書)とは難しい学問でした。

経験は身近であるゆえ、さまざまな角度からの論証が可能で、またそれへの反駁も可能でありかつ、抽象度が高いものでした。

〜〜的や、〜〜化など、非常に抽象度の高いワードを使った抽象度の高い議論が多く、初めての方は読了までにかなり時間がかかりそうです。

しかし、内容は非常に論理的で興味深く、各章の「哲学的な問い」ではそれぞれ納得できるような展開がされていました。

例えば「第九章 人生」では、「人生の意味」「人生の価値」という現象学的な問いから「人生とは、どう生きればいいのか」という哲学的問いに発展しています。

しかもその結論が非常に示唆に富んでおり、これからの人生に活用できそうなものでした。

・現象学に興味のある方

・少し難しい本を頭を使って読んでみたい方

・哲学が好きな方

こんな方におすすめだと感じました。

ではまた!!

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