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自分の中の「闇」を愛でよう-『ペルソナ 脳に潜む闇』

書評
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「人間は、脳は、一貫している方がおかしいのだ」

脳科学者で、TV出演などでも活躍する中野信子氏の最新作。

誰もが自分の中にある「闇」の扱い方のヒントを与えてくれるような、独特の視点から切り込む話題のエッセイです。

本記事は、本の概要紹介書評を中心に進めていきます。

本の概要

タイトル:ペルソナ 脳に潜む闇

著者:中野信子

出版社:講談社現代新書

出版年月:2020年10月

ページ数:238

読了目安:約5時間

独特の世界観、世に囚われない思考を持つ中野氏の心の中を覗けるエッセイです。

一冊を通して明快かつ痛快な口調でズバズバ切れ込み、誰しもを引き込むような内容となっています。

本書の意図は「中野信子という人間を曝け出すこと」

彼女は自分の中にある「闇」を脳科学者の視点から客観的に、冷静に扱います。

ゆえに、読者の私たちの中にもある「闇」の部分にも語りかけているような、「こんな生き方もあって良いんだ」と思わせてくれるよう。

私たちが自己嫌悪に陥りそうなほどの「闇」も、扱い方があると言うことを教えてくれます。

鬱を患った経験もある彼女だからこそ持てる視点を覗いてみてはいかがでしょうか。

生きるヒントをいくつも学べるはずです。

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書評

「明るくて正しいメッセージを発し続けていると、かえって闇が深くなることがある。

 自分が満たされていないのは、自分がおかしいのだ。

 ポジティブになれないのは、自分によくないことがあるせいだ。

 そうやって自分を密かに責め続けて、止められなくなるのである。」

誰しも、どんなポジティブな人でも、落ち込むときは必ずありますよね。

僕もそうなのですが、人前で明るく振る舞うこのが普通になっていると、自分が落ち込んだ時の対処法がわからない。わざと元気を出そうとしても、それがむしろ「自分に元気がないこと」を認めてしまっているようで、かえって落ち込んでしまう。

中野氏も言及していますが、世の中では「ポジティブ」でいると言うことが美徳とされ、落ち込んだらポジティブ思考、自己啓発書も結局はポジティブ思考なだけ。

実は脳科学の視点から、ポジティブになるべきだと周囲に思われている環境では、人間はかえってネガティブに陥りやすいことも明らかにされています。

このような「ポジティブ大正義」の日本に、中野氏はこう語りかけます。

「前向きでいられないのはその人の心の問題などではなく、苦しい時に前向きになれる方がおかしいのだ。苦しい時には苦しくてあたりまえだ。」

確かに、その通りですよね。

苦しい時にわざわざポジティブにならなければいけないなんて、誰が決めたのでしょう。

『ポジティブに生きなよ!』と言ってくれる友達や上司や親も、ネガティブになることだってあるんです

しかし、中野氏の真骨頂はここからです。

「うつ患者の方が優れていることだってたくさんある」と彼女は言います。

「そもそも、何かについて考えすぎて落ち込んでしまうのは、より良い明日を生きるために必須です。そのような状態を一過性でも経験することになると言うことは、重要な思考様式を学ぶことなのです。」

実際に、迅速な意思決定を行うテスト・話の信憑性を見分けるテストではうつ患者の被験者の方が成績が良く、物事に対して深く思考ができている事の証明だと言います。

極め付けはこれです。

「働かざるもの食うべからず」、という言葉が私は大嫌いだ

 社会/世界に対して何か供するものがなければ死ぬ、とでも言わんばかりの、豊さとは真逆のところから出てくる発想がなんとも悲しい。

 私は役に立っていますと言い訳をしながらではないと言い訳をしながら出なければ生きてはいけない世界。いかにも余裕のない、心の貧しさが濃く漂う言葉ではないか。」

受け取り方は人それぞれでしょう。

しかし、いくら「闇」を抱えていたって生きているだけで凄いことであって、もはやその価値は誰にも測れることではない。自分を嫌いになる必要はないもしそんな自分のことを測ってきたり、文句を言ってくる人は、堂々と嫌いになって仕舞えばいい

こんな、『あくまでポジティブ論』よりも『ネガティブのなかに良さを見つける』という、ただのポジティブ論に内包されない「闇」の扱い方もあるのではないか、そう気づかせてくれる本でした。

明るく、清く、正しく、誠実に生きるだけが人生ではない

気になった方は是非本書を手に取ってみてください。

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